ゲル |
空は厚い雲で覆われているが、南側の空の雲は薄い。山側から広い平原盆地に入った。岩もところどころにあり、地形の起伏もある。草は今までよりも少なく、背も低くなった。草原のわだちも何本もあり、どの道を行けばよいのかわからなくなった。 ゲルが2つ並んであった。私たちはこのゲルに寄って、道を聞き、ついでにアイラグを仕込むことにした。 「サィンバイノー(こんにちは)。」 と言って、入口の扉(ウードゥ)を開けてゲルに入いると、主人は私たちを中に招き入れて、どんぶりになみなみとアイラグ(馬乳酒)を注いで、差し出してくれる。主人はおもむろに煙草入れから嗅ぎ煙草を出し、自慢しながら嗅ぐようにと差し出す。モンゴル流の挨拶である。私たちの旅の目的など話をしながら、情報交換をする。 トゥメンバイヤーは、私がポラロイド・カメラを持っていることを話し、写真をプレゼントするかわりにアイラグやシミンアルヒをもらえないかということを交渉した。話がまとまり、私たちはゲルの外に出た。 外に出るとサンペルガバさんがアルガリ(乾燥した家畜の糞)を集める篭を背負って、アルガリ拾いのまねをしてみせた。ゲルの家族は、写真をとるということで、家族全員を呼びに行き、時間をかけて正装し、馬に乗ったり、バイクを持ってきたりと大忙し。私は草原の写真屋となった。 ポラロイドのフィルムからだんだんと色が浮き上がってくるのを、驚異と感激をもって彼らは喜んでくれた。きっとこの写真も戸棚のジャーツの中に飾られるのだろう。 私たちは、アイラグとシミンアルヒ、それとアーロールもいただいて、ゲルの家族に別れをつげて、マンダルゴビに向かった。 |