天の川 

 西側の奥には、石垣と屋根のある大きな羊よせと、ひとつのゲルがあった。私たちは、そこからは見えない東側の岩場の下で、キャンプすることにした。日没はもうじきだったが、西側に雲があり、夕日は見えなかった。トゥメンバイヤーが明日は曇りだろうと言った。

 さっそく私たち4人は、それぞれ自分のテントを張りはじめた。午後8時に日没し、暗くなった中、夕食となった。
 矢崎さんは、今日の旅で相当疲れたらしく、すぐにテントにもぐりこんだ。空が暗くなり、真っ暗な中に無数の星が輝きはじめ、天の川が現れた。私と井上くんは地面にシートを敷いて寝転んで、満天の星を眺めることにした。

 「天の川を最後に見たのは、中学生のときだった。」
 井上くんは感動して、言った。

 「あっ、子熊座が見える!」
 「星が流れた!」
 井上くんは、いろいろな星座を私に教えてくれた。プラネタリュームとはスケールがちがう。星も降ってくるように、きらめいている。

 下半身が寒くなったので、午後10時すぎにテントに入り寝袋にもぐりこんだ。トゥメンバイヤーたちは車の中で寝ているらしく、ドライバーは車の近くで毛布にくるまって寝ていた。モンゴルではドライバーは車の警備責任があるので、ホテルやテントがあったとしても車の中に寝るのが原則だという。
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