海と島じま |
星野通平 東海大学出版会 1977年 世界地図はおろか、その国の地図にさえのっていない無人島から、数千万の人があふれるわが本州まで、地球の上には、さまざまな、数多くの島じまが、海に浮かんでいる。 これらの島じまの自然と社会は、島ごとにことなる、特有の歴史をもっているはずである。そして、島じまの歴史は、海とのかかわりあいを抜きにしては、語ることのできないものである。 最近は、休暇になると、都会の雑踏をのがれて、島を目ざす人びとが、急激にふえている。あるいは、新婚の旅を、サソゴ礁の島にえらぶ人も多い。これらの人にねがわくは、島を訪れる船の上から、あるいは、訪れた島の高台から、全周360度に展開する水平線を見渡してほしいものである。 そのひろがり、その水色、海はさまざまなことを、私たちに語りかけてくれるにちがいない。私は、もっともっと、海の思想が、日本人のこころにしみわたってほしい、と思っている。この3月に、本書の原稿を書きおわってから後の、わが国をめぐる海のさわぎは、ただならぬものがある。海の思想に欠けた進路をたどるかぎり、国の悲劇は、いっそう深まるばかりである。 本書は、海と島とのかかわりあいを、海の科学の立場からつづったものである。島を訪れる人が、島の内だけでなく、島をかこむ海に眼をむけて、その水、その水底に思いをはせるとき、海の科学の手引きにもなれば、とねがっている。 本書は、1971年に、雑誌『オーシャソ・エージ』に連載した記事を骨としたものであり、第6章の一部は、『国土と教育』 (1971年第五号) に掲載したものである。出版にあたって、あれこれと世話になった、東海大学出版会の中陣隆夫氏と、写真を提供していただいた、西村朝日太郎、佐藤武、岩田喜三郎、柴正博の諸氏にお礼申上げる。 いま、わが望星丸は、満天の星空の下を、北斗七星の柄杓のもとを舳先にし、伊豆神浮島の灯台のまたたきをはるか右にして、リギンに風をならし、船橋にしぶきをあびながら、母港清水を目ざして、漆黒の海をひた走りにはしっている。海と島をめぐる、一週間の実習航海の帰途である。 1977年5月20日 午前2時 星野通平 (本書の「まえがき」より) |
2001/09/02
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