私の情報整理法 |
野口悠紀雄著 『超』整理法-情報検索と発想の新システム-を読んで |
本書では、書類の整理・検索ができないことは、「分類すること」にともなう問題があるためで、分類をせずに時間軸に書類や情報を並べる管理システムを提案している。 私も「騙された」と思って早々に、第1章にある書類や資料に関する「野口式押しだしファイリング」をためしてみた。そうすると、書類や資料が「魔法のように」かたづき、十分な管理・検索ができるのに驚いた。そこで本書の紹介をしつつ、あわせて私の情報整理法を紹介する。 「野口式押しだしファイリング」は次のとおりである。本棚に一定の区画を確保し、角型2号封筒(A4の書類が楽に入る封筒)を大量に用意する。そして、机の上に散らばっている書類や資料をひとまとまりごとに封の部分を切った封筒に入れる。このまとまり(封筒)を「ファイル」とよび、封筒裏面の右肩に日付と内容を書く。封筒を縦ににして、内容のいかんにかかわらず、書き込みが見えるように本棚の左端から順に並べていく。 これだけである。以後、新たに到着した資料や書類は、同じように封筒に入れて、本棚の左端に入れる。取り出して使ったものは、左端にもどす。たまっていらなくなったファイルは捨てる。これだけである。 封筒の封の部分を切るのは本棚の高さ(A4サイズ)に合わすことと、封があることで検索時にファイルの動きが悪くなるからである。私の場合、左手で検索するくせがあるため、筆者とは異なり、封筒裏面の左肩に日付と内容を書き、本棚の右端がら並べていく。 この方法は、個人のデータを時間軸に整理し、さらに使用頻度で管理するというものである。分類して管理する方法は、多くの人が使用する会社や図書館などでは必要であるが、個人としては管理に手間がかかりすぎる。この方法は、コンピューターファィルの順次処理(ストリームアクセス)に検索処理(ランダムアクセス)を付加した構成で、個人データの管理・検索には威力を「超」がつくほど発揮する。なによりも、分類することに悩むことが少ないために、気楽にどんどんかたづけられる。 これまで、クリヤーファイルや2穴式ファイル、レバーファイル、ファイルボックスなどに入れたり綴じていた書類や資料をこの方法で封筒に収納すると、収納スペースが今までの 2/3、いや半分ちかくになった。整理された本棚の封筒ファイルの列をみて、さらに以前に使っていたファイル用品の山をみると、今までのファイル用品は資料をためていたのではなく空気をためていたことに気づくと同時に、今まで文房具会社に騙され続けいてたことを後悔するほどである。 今までいろいろなファイル用品を用いて整理していたが、書類のサイズや厚さがそろっていないときには綴じることができず、また綴じる余裕もなかった。さらに、それらを分類別にしていたために、これまで同じ項目のファィルがいくつもあり、どれに資料を入れたがわからないことが多々あった。また、探すファイルをみつける努力もせず、分類することにおっくうがって、つい横積みに放置される資料も多かった。 しかし、この新たな方法は、分類せずにとりあえず封筒にその時の書類を入れて日付と内容を書いて立てるだけである。分類から頭が解放されたことと本棚にスペースができたことは、本書にもある今野教授の「脳ミソのスペースが広くなったような感じ」という表現そのものである。 また、本棚の封筒ファイルの列をみて気づくことは、案外自分の仕事の資料は少ないな、こんなものなのかなということである。今まで資料がいろいろなところに分散されていて、管理できなかったために、自分の仕事の資料が膨大なものであると錯覚していたのである。すなわち、自分の仕事の資料は、順次処理で十分検索できるの量なのである。 おそらく普通の人であれば、本棚1段分(約80〜90cm)で足りるだろう。私は論文関係の資料が多いので余裕をもって全部で4段分を使っているが、通常使用するのは1段分で、あとは保存資料がほとんどである。 私は、大学時代の一時期にノートをルーズリーフやカードにしたために、講義ノートやメモが散逸した失敗がある。また、ノートを分類別にしたら、同じ項目のノートや数ページ使っただけのノートの山ができ、さらにどこに書いたかあとで検索もできず、自分の整理・管理能力にいつも自信をなくしていた。 これらの失敗とは反対に、私の地質調査のデータは野帳に時間順に記載されていたことがら、散逸がなく、時間軸の記憶をキーにして検索も容易だった。人の時間軸の記憶というものは、すばらしいもので、それがいつ(何年何月何日)かはわからなくても、あの出来事よりも後だとか、その順序について検索キーをもっていると思われる。また、ノートは散逸しない重要な記憶媒体という認識も以前からあった。 これらのことから、私は1986年9月9日から「ノート1冊主義」を行っている。すなわち、ノートは1冊しかもたず、それに内容のいかんにかかわらず、順次に記録やノート、メモをとることにしている。現在28冊目を使用しているから、1年で4冊程度である。だだし、スケジュールや住所録などについては別のダイアリーノートを1冊携帯している。このシステムにかえてから、私のノートに書き込んだ情報の散逸はなくなっているし、どこを探せばいいかもわかっているので大変気が楽である。 また、私は10年以上まえから、写真のスライドを佐藤 武さんの整理・管理法にしたがって、時間軸管理を行っていた。すなわち、スライドはスライドファイルに内容のいかんにかかわらず、現像が上がってきた順に並べて番号をふる。番号がついているので、使ったあときちんと納めることができ、なくなっているものも発見しやすい。これだとスライドの散逸がほとんどなく、また収納スペースも分類するよりも大変少なくてすむのである。私のスライドは現在8000枚を越えたが、貸して返ってこなかったものが数枚あるが、自ら紛失したものは0枚である。 住所や名刺の整理・管理については、いろいろと悩んでいたが、本書を読んで自分の方法をつくっていこうとしている。頻繁に使用する住所や電話番号は、今までダイヤリーノートに毎年更新しながら書いていっている。データとしての住所録については、かつてコンピュータを用いて、 basicでプログラムをつくったり、データベースソフトを用いて管理したが、めんどくさくて途中で放棄している。 それではどうしているかと言えば、ワープロで住所録をつくっている。年賀状の発送枚数も 200枚程度で、その他含めても住所データは 300件は越えない数なので、検索も楽である。ソート機能がワープロについていればとも思うが(文章や言葉で検索できるソフトはある)、数が少ないのでアイウエオ順に並び替えるのも入力時に挿入するか、ワープロの移動機能でできる。それに、ワープロだと出力様式をいろいろと変えられるし、なんなら他のソフトのテキストとしても活用できる。 名刺については、ずっと悩んでいた。どんどん増えていくし、最初はアイウエオ順に並べていたが、いつのまにか整理をしないままもらった順番に日付をつけて積んでいた。本書では、名刺は1年半もすると使えなくなるしろものなので、もらった順にならべて、使ったものを前にもってくるという方法を提案してる。なんと、私のやっていた方法と同じで、たしかにこれで困らないのである。 ちなみに、はがきは来た順にはがき用のクリヤーファイルに収納している。手紙は大きさがまちまちなので困っていたが、書類とおなじで封筒に収納することにした。これらのものは、紛失すると大問題になることがしばしばあるので、まず封筒に格納することで紛失が避けられる。 このように個人データを時間軸を基本に管理することは、私が今までやってきた限り、他の分類によるどの整理法よりも優れていると思われる。それは、ひとつには、分類する悩みから解放されることと、分類したことにともなう問題がないことである。 また、検索については、個人データの量自体が順次検索をしたところでそれほどの時間がかかるものでないことと、封筒の規格が一定していて置く場所が定められているので探しやすく散逸がない。さらに、順次検索をすることにより記憶にとどまる機会が多くなり、検索スピードが速まる。他に置かないかぎり、探していけば必ずそこにあるという安心感も大きい。 本書の第2章ではパソコンによる「超」整理法が紹介されているが、パソコンの検索能力を活用すればわざわざ人間があらかじめ分類する必要のないこととが紹介されている。また、今後データベースサービスを活用することによって個人が大量のデータを分類して持つ必要のないことが示されている。 本書ではまた、分散型情報システムの発展にともない、中央集権型システムは崩壊すると示唆している。すなわち、組織のあり方そのものが、個人個人の独立した仕事を中心としてたものに変わっていくと言うのである。したがって、本書で提案された方法論が個人向けのものだからといって、この方法が適応される範囲が将来個人に限られるものでないことが述べられている。 なにはともあれ、一度「騙された」と思って机の上の書類を封筒に入れて整理してみたらどうでしょうか。その時には、騙されたと思って本書を読んでみてください。あなたの机の上は、きっと「魔法のように」かたづくことは請け合いです。 |
最終更新日:01/04/25
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