1923年にモンゴルの南ゴビのバヤンザクで、恐竜の卵化石が発見されました。発見当時、卵が出てくる地層からプロトケラトプスの化石がたくさん発見されたことから、プロトケラトプスが産んだ卵と考えられました。
しかし、その70年後の1993年にこの卵の少なくともいくつかは、肉食恐竜のオヴィラプトルが産んだものであることが分かりました。それは、プロトケラトプスの卵といわれていたある卵化石の中から、オヴィラプトルの胚(卵の中の赤ちゃん)が発見されたからです。
オヴィラプトルは「卵泥棒」という意味の名前で、プロトケラトプスの卵を盗んでいたのだろうということで、名前がつきました。しかし、オヴィラプトルは卵を盗んでいたのではなく、自分自身の卵を守っていたと思われます。
現在、これ以外にも卵の化石から胚が発見された例がいくつかあります。モンゴルから獣脚類オヴィラプトル、アメリカのモンタナ州のヒプシロホドン類のオロドロメウス、アラバマ州のカモノハシ竜ヒパクロサウルスなどががあります。
現在、恐竜の卵化石の研究は、卵の中に胚がいなくとも、殻のタイプや形、サイズ、殻の表面や断面の構造、巣における卵の配列などから、分類や同定が行われています。卵の分類で、もっとも重要視されている要素は、殻の断面にみられる微細な結晶構造です。これは、殻を薄くカットして、スライドの上にのせて、光学顕微鏡や電子顕微鏡で観察します。
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