恐竜の種は、それぞれたったひとつの公式な名前をもっています。しかし、恐竜の化石は、鼻から尻尾の先まで完全なものは少なく、多くの恐竜化石は不完全な骨格にもとづいて名前がつけられています。
ひとつの不完全な骨格化石でも、古生物学者が今まで知られているすべての種と十分に異なると考えれるなら、新しい名前がつけられます。しかし、ときどき、ふたつの不完全な標本に対してそれぞれに名前がつけられた後に、それらが同じ種の恐竜であることが分かることがあります。こういうことが起こると、もっとも最初に提案された名前が優先権をもつことになります。
マーシュ【O. C. Marsh】によって記載されたふたつの部分的な骨格に、ふたつの名前がつけられました。1877年に最初に記載されたものにはアパトサウルス【Apatosaurus】という名前がつけられ、1879年の2番目のものにはブロントサウルス【Brontosaurus】という名前がつけられました。
その後、このふたつの骨格が同じタイプの動物であることがわかり、その名前のひとつが無効にされました。なぜなら、アパトサウルスという名前はブロントサウルスという名前よりも2年も古かったので、アパトサウルスが公式で正しい名前となりました。
似たような例で、こんなこともあるかもしれません。メスの恐竜はオスとはとてもちがって見えると思われ、そして性的に異なった標本には異なった種名がつけられているかもしれません。若い動物は成体と似てないこともあるかもしれません。
さらに個体どうしの変異差もあるため、ひとつの標本だけでひとつの種を代表させることは大変むずかしい場合があります。したがって、できるだけ保存状態のよい標本によって分類学的な問題を検討する必要があります。
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