草原と岩山(7月22-23日)

デルゲルハンガイ山

 キャンプしていたデルゲルハンガイ山の南側山麓のまわりの岩山は、朝になって気づくと、上部原生界の石灰岩や苦灰岩とわかりました。そこで、さっそく朝一にミンジンさんに案内してもらいました。

 デルゲルハンガイ山自体は、ペルム紀の花崗岩や火山岩などでできている東西方向に連なる幅5kmほどの山体です。古生代末に、原生界基盤の東西方向の断裂帯にそってマグマが複雑に貫入した結果につくられた地質だそうです。

 峠から山の地形を見渡すと、山地の色や地形の配列で花崗岩や火山岩、凝灰岩など岩脈などの地質の分布が理解できました。峠をおりはじめるとどしゃぶりの雨になりました。

 ガソリン補充とアルヒ補充のために寄ったデルゲルハンガイの村では、ガソリンがありませんでした。天気も悪くなってきて、まるで南ゴビから私たちのキャラバンを雨雲が追ってくるような感じがしました。これも初日に私がオボーの積み石をハンマーでたたいた祟りかと、後悔しました。

 しかたなく予定のコースを変更して、北東のルースという村まで行くことにしました。ルースではガソリンの補給ができましたが、時間を余分に使ったために、今日のキャンプ地のバガガザールに向って直線コースをとることにしました。しかし、雨が強くなり道をみつけることができず、マンダルゴビまできて、そこから北北西に北上するコースをとりました。


最後のキャンプ

 イクシンゲルの露天掘り探鉱を見学したあと、キャンプ地のバガガザールには午後8時前につきました。これまでの草原から岩山の奥深く私たちのキャラバンは分け入って、花崗岩の大規模な岩体の真ん中で車が止りました。

 今日の雨中の強行軍を考えると、みなさんの不平の声が聞こえるかと思っていたら、反対に、
「なんてすばらしいところに案内してくださったのか。」
 と言う人たちばかりでした。

 そして、参加者がゲルの組み立てを手伝ったり、薪を拾ってファイヤー・ストームの準備をはじめるではありませんか。いままでの旅で、キャンプ生活やモンゴルの旅にすべての人が満足していなかったかとは思いますが、最後のキャンプ地のこの岩山の奥にきて、みんな一丸となって今しなくてはならないことを協力し合っているのです。

 この晩は、この旅に参加したすべての人たちが火を囲み、アルヒを酌み交わし、最後のキャンプを惜しむように、夜遅くまで楽しく過ごしました。


ウランバートルへ

 次の朝は、モンゴル風に出発時間などあまり気にせず、ゆっくりと岩山の風景を楽しみました。ゲルの設置のためにここまでついてきてくれたソガラさんの家族と別れ、この花崗岩体の縁辺の鉱床を見学したあと、ランチ場所であるイフハイハンに向かいました。

 イフハイハンもバガガルと同じく、ペルム紀から三畳紀の地層の間にジュラ紀に貫入した花崗岩体のひとつです。そしてそれは、やはり草原からそびえるとても雄大な岩山のひとつでもあります。

 旅人は
「言葉にならないね・・・。」
 と感動の言葉をもらしました。

 ウランバートルまでの帰途では、草原でタルバガンを見たり、ミニバスが故障したり、ジープが最後にガスケツをしたりといろいろありしましたが、無事日没までにホテルに着きました。


「砂と岩の大地」へ

『モンゴルの恐竜化石』へ