あとがき

 私はこの旅で、ゴビのジュラ紀から白亜紀にかけての地層と化石についての多くのことを学んだ。ジュラ紀以降の地質時代は、地球の歴史の中でも新しい展開のあった時代である。玄武岩の活動にともなって、大陸や海洋底の隆起と形成、さらに海面の上昇などがあり、その結果現在の地形の原形が形成された。また同時に、生物界では被子植物や石灰質の殻をもつプランクトン、哺乳類、鳥類、硬骨魚類など現在繁栄する生物の祖先が誕生し、進化していった時代でもある。

 ゴビでもジュラ紀から白亜紀にかけての地質時代は、やはり玄武岩の活動と山地の隆起、それに平原盆地の形成で特徴づけられていた。そして、その中で恐竜たちや哺乳類の先祖たちが生きていた。私はあらためて、トゥメンバイヤーはじめこの旅で私をサポートしてくれたモンゴルの友人たちに感謝する。

 モンゴルの人たちはとても独立心が強く、誇り高く、とても気がいい。それは、彼らがきびしい自然の中で生活を築き上げてきた人々であり、またチンギスハーンを民族の英雄としながらも、他国の侵略や民族の分離の苦しみを長い歴史の中で味わってきた人々だから、当然のことかもしれない。

 モンゴルの人口構成は非常に若く、15歳未満の人口が44パーセント、20歳未満が55パーセントをしめている。モンゴルは、現在人口も少なく経済力も弱いが、この人口構成を見てわかるとおり、これからの世代を担う若者の多い若い国である。

 今、モンゴルでは試行錯誤の中、新しい国づくりがはじまっている。彼らの新しい憲法には、「家畜は国民の富であり、国家の庇護下にある。」として、遊牧の生活がモンゴルの生活基盤であるということを最初に唱っている。彼らは自分自身を見失ってはいない。そして、彼らは混乱の中からきっと誰にも干渉されないモンゴル民族の国をつくっていくにちがいないと、私は期待している。

 「チンギスハーンは源義経である。」という話を聞いた方もおられるだろう。これは明治時代に言われだしたのであるが、まったく根拠のない嘘である。大日本帝国は第二次世界大戦中、内モンゴルに侵略した時に国内でこの嘘を流布させた。これは、日本のモンゴル侵略を正統化するためのひとつの手段に使われたのではないだろうか。現在でも中国の政治家の中には、「チンギスハーンは中国人である。」と言う人がいるという。

 自分の利益や自分の国の利益のために他国の富や他民族を利用するのではなく、私たちはお互いに独立した個人として、そして友として、お互いの生活や国のことを気づかい助け合っていきたいものである。そのためにはまず、お互いに交流し合い、お互いの国の歴史や人々の生活と文化などを十分に理解することが必要であると考える。

 今回のモンゴルへの調査旅行は、このことを私に再認識させてくれた旅でもあった。

1995年5月24日 清水にて

柴 正博

  1. ゴビよさらば
  2. モンゴルの学校
  3. ハンガイ
  4. ハラホリン
  5. ウランバートルへ
  6. サマーハウス
  7. モンゴルを去る
  8. ダニ騒動
  9. あとがき

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登録年月日:1997年05月21日
最終更新日:
98/01/10

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